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【暴走実話】③ 前輪のブレーキが完全に効かない単車でパトカーの集団に追われた夜

現役暴走族時代に起きた集会中の惨劇をふり返る! 物陰に潜んでいた警官がフルスイングした六尺棒が顔面をヒット! さらに借り物のXJはトラブル連発で……暴走族と警官のチェイス、さて結末は!?
※このストーリーは読者の投稿によるものです
体勢を立て直せたことで多少、冷静さを取り戻していたのだが、今度は左目が霞んでしまって見えないことに気付く。ズキズキと顔全体と頭が痛みだし、身体が一段と重苦しくなって来た。

正直、とてもじゃないが単車を運転できるコンディションではない。よっぽど後輩に運転を代わってもらおうと思ったが、「後輩のケツには乗れねぇ」という意地が、最後には勝ってしまった。

もっとも、パトカーが迫っているこの状況で運転を代わる余裕など、どこにもなかったのだが。

唯一の明るい材料は、後方を走る本隊が無数のパトカーの赤色灯と私たちの異変に気付き、途中でルートを変更してくれたこと。

(気付いてもらえて良かった……)

ルートが変更されたことを確認し、私たちも本隊へ合流するために進路を変えて動き出した。そのためには、まず追尾してくる複数のパトカーをひとりで止めなければいけない。1台でケツ持ちするようなものだ。
ただ、今乗っている「XJ400D」はフロントブレーキが使えない。しかも視界が薄ぼんやりしていて、まともに前方が見えない。最悪のハンデを背負ってしまった。とはいえ諦めたら、即逮捕なのだ。ここで諦めるわけにはいかない。

過激な追い込みをかけるパトカーの窓から身を乗り出し、後方から六尺棒で叩き続ける警官。少しでも気を抜くと道路の隙間を突いて、私たちの前方へと回り込もうとするパトカーの動きから、「パクってやる!」という意地が見られる。こっちだって意地でも負けられない。

私もそれなりの場数を踏んでいるので、そんな追い込みに臆すことはなかった。追尾する複数のパトカーを前にローリングで抗戦する。こんな状況で真っ先にパクられるのは、たいていが警察に、自分の運転に、ビビってしまう者だ。そんなときほど「楽しむ」ことが一番の安全策というのが、経験を踏まえた私なりの持論だ。

ただ、フロントブレーキの効かない単車で抗戦すること、左目がまともに使えないことに若干の恐怖はあった。ケツ乗りの後輩には、私の目の代わりを担ってもらい前方の確認を入念に行わせた。

さらに、警察との攻防に備え持参している鉄パイプを使って、後輩には警察と戦ってもらった。

そんな攻防の末に、ようやく追尾するパトカーを振り切って本隊に合流できた。おそらく、時間にしたらたった数分の出来事だっただろう。それが私には30分にも1時間にも感じられた。

「ようやく落ち着ける……」

本隊へ合流したそんな安堵感も束の間、次なるトラブルが発生した。

――後輪が滑る!?

調子が良かった「XJ400D」のエンジンから、知らぬうちにオイルが漏れていたのだ。漏れたオイルが後輪に絡まり、スリップ現象が起きたのである。リアブレーキを強く踏むとコケてしまうであろう状況に正直混乱した。

(前も後ろも使えねぇ!)

本隊と合流しても、パトカーは執拗に追いかけてくる。

途中途中で先回りしてくるパトカー。

六尺を持って背後から仕掛けてくるパトカー。

封鎖を仕掛けるパトカー。

……今日に限って周りはパトカーだらけ。

対するコチラは絶好調から絶不調に様変わりした「XJ400D」で対抗するしかない。エンブレと緩いブレーキを繰り返し、なんだかんだでパトカーを巻くことに成功したわけだが……。

その後の記憶は無い。翌日、気が付くと特攻服を着たままの状態で自宅で寝ていた。

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