カルチャー

【最後のチャンプロード編集部員】ミサイルの取材回顧録①

惜しまれつつ休刊してしまった“不良のバイブル”の取材で出会った人物や思い出深い事案を、記憶を頼りにつらつらと綴ってみたいと思います
【ミサイル、編集部入りする】

編集部入りのきっかけは、後輩のライターからの紹介だった。

携帯に着信があった。競馬・麻雀と、ろくでもないことでばかり気が合う仲間で、この日の電話も当然“面子が足らないんですが……”という誘いと思い、電話に出た。ところが、どうもトーンが違う。

「ミサイルさん、突然だけどチャンプロードの編集やらないですか?」

と、いう。当時の自分は、それまで勤めていた会社をフラッと辞めてフリーライターをやっていた。とはいえ、ハナっからフリーライターで食っていく気はさらさらなく、再就職口を探しながら細々と食いつないでいたのだから、フリーライターというよりフリーターみたいなもんだった。

「自分に話が来たんですけど、俺まぁまぁ仕事あるじゃないですか(笑)。だったら無職のミサイルさんに、どうかなぁ~と思って」

口は悪いが、こちらを心配してくれたのだろう。頭が下がる。
もちろん、チャンプロードという雑誌の存在は知っていた。特殊な取材対象をもった稀有なる専門誌。ものすごく興味はあったが、門外漢からすると敷居の高さも尋常じゃない。問題は、果たして自分があの世界に入っていけるどうか、だ。

とはいえ、悩んでいても始まらない。ぜひ話を伺いたい、と編集部の連絡先を教えてもらい、その日のうちに電話を掛けた。「とりあえず、会って話しましょう」ということになり、数日後、面接にお邪魔した。

お会いした編集長は、自分とほぼ同世代。聞けば、募集対象は「運転免許を持っている若者」だったのだそうだ。自慢じゃないが、若さはもちろん、免許すら持ち合わせてはいない。「あの野郎……」。紹介してくれた後輩を少し恨む。

視線を落とした先にあったチャンプロードを手に取り、パラパラとめくる。すると……あれ? これCBXじゃないか。自分が中坊のころ、恋焦がれた単車だ。ほかにもGS、GSX、FX、XJ……。知ってる単車ばかり。なんだコレは。どういうことなのだ?

「ああ、今は現役が少ないかわりに、旧車會が増えててね。80年代のバイクが人気なんだよ。誌面に登場するのも、ほとんどがこの時代のバイクだよ」 「この辺の単車、けっこう分かりますよ。中学の頃は月刊オートバイとか、回し読みしてましたから」

「この辺の単車、詳しいですよ」ではない。「知ってますよ」というだけのことで、知識としてはめちゃめちゃ浅い。よくもまぁ、そんなことをアピールしたなと我ながら思うのだが、何も知らないよりは知っている方がよかったのだろう。数日後、採用の連絡をいただいた。不良のバイブル編集生活が、始まった。


文責:ミサイル
プロフィール:元チャンプロード編集者。ペンネームは、学生時代の友人が酔っ払って付けたもの。現場ではまったく浸透していない。撮影のあとの生ビールは特別に甘く感じる舌を持つ。

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