GS400といえば旧車會でも人気の高いスズキの名車だが、その派生モデルである“L”のほうは、極めて個体数が少ないせいか一般的には影に隠れがちな存在だ。しかし旧車會界隈では「外装が少し違うだけのレア車」「エンジンのダメージが少ない希少車」という評価を受ける人気車種で、通好みの渋さが光るバイクでもある。
このマシンはそんな“通好み”を突き詰めたような仕上がりで、ヤンチャというより優美。見る人が見れば“おっ、やってるな”と唸らせるポイントがいくつも盛り込まれている。
足回りはかなりしっかりとした加工を加えていて、6本スポークのキャストホイールにGフォアのダブルアンチを換装。そこに鉄メッキの純正フェンダーを装着しているので“らしさ”は損なわないというバランス感覚がかっこいい。
ちなみに実際に稼働させているのかは不明もダブルアンチのコードがつながっているのもポイントだ。
エンジン周りもカスタマイズは最小限に抑えられ、GS400Lの威風を令和の今に伝えている。そんな純正バリバリのビジュアルに華を添える全日本麗心愚連盟のポイントカバーはオーナーお気に入りのパーツだ。
これはいわばこのマシンの魂の名刺代わり。単なる装飾パーツにとどまらず、昭和の情念や仲間との絆、そしてマシンへの誇りまでも背負っているような存在感がある。
リアサスは安定のマルゾッキに換装、そのカラーリングが程よい差し色となっている。
マフラーはキャンディーライフの名品・エクセル管。ハス切りにしたエキパイの焼けも程よく、熱によって浮かんだ“アタリ”も年季を感じさせるものだ。こういった「やりすぎない美学」は、GS400Lという希少な存在に対するオーナーの敬意がにじみ出ている。
リアにはレース用スイングアーム&トルクロッドを装着。クラシカルな“エル”のスタイルに剛性の高いスイングアームとレース用サスという走りを意識したカスタムは、なぜかスズキのバイクにはピッタリとハマる。
マルゾッキの赤いボディはあえてフレームや足回りの黒とのコントラストを狙って配置されたような絶妙な存在感を放っている。しかもこの赤、キャッチーなだけでなく性能も本物。旧車=見た目優先という偏見を覆す、「魅せて走れる」リア足回りがここにある。
タンクのカラーリングは純正メタリックマルーン。まったく手を加えられていない感じが美しくも潔い。角度が絶妙につけられたビルズハンのゆるやかな上がり具合が、ライディングポジションに適度な余裕をもたらしつつ、旧き良きチョッパースタイルの名残を感じさせる仕上がりになっている。
社外のZ2ミラーも主張しすぎず、全体のシルエットを崩していない点にも、オーナーの美学とセンスが光っている。
純白の三段シートやタンデムバーも、存在感を示しつつわずかにケツ上げした全体的なフォルムにうまく馴染んでいる。
一方、鉄メッキのリアフェンダーには40年以上の時を経た“当時”の形式データラベルが今も残る。文字はかすれて読みにくいが、その風合いこそが時間の証であり、このGS400Lがただの旧車ではなく「時代を生き抜いてきた車体」だということを教えてくれる。
こうしたパーツの一つひとつに、オーナーが過剰な手を加えず「当時の空気感」を守り続けようとしている姿勢が見て取れる。そんな“残す美学”がこの一台には宿っている。
今や希少となったGS400Lだが、オーナーは外装にさらなる磨きをかける予定とのこと。部品供給も難しい旧車を所有する上で大切なのは、やはり愛情をもって接することだろう。旧車を愛する者として、このマシンのオーナーに心から尊敬の念を表したい。
■オーナー:ちょーさん
■チーム名:漫珠沙華
■ひとこと:漫珠沙華よろしく〜!