旧車會でトップレベルで人気のバイクといえば、CBX400F。その分オーナーがマシンへ注ぐ愛情もハンパなく、仕様もペイントもオーナーそれぞれの個性で溢れていて、どのパターンが正解とはいえないくらい多種多様だ。
この1台もオーナーのたどり着いたひとつの完成形と言える。
イノウエのフルカウルはゴールドのラメクリアに黒のグラフィックラインが力強い。前方へ鋭く伸びた三本ラインが全体のフォルムをさらに引き締め、スピード感を視覚的に演出している。
そして忘れちゃいけないのが、カウル下からチラ見えするPIAAのフォグランプ。戦闘的な外観に対して、どこか愛嬌すら感じさせるこのワンポイントが、マシン全体に“余裕”を与えている。
ステッカーを施したスクリーンも含めて、ただ派手なだけではない、オーナーの美意識と遊び心が凝縮されたフロント周りだ。
愛媛所在のショップ・ガレージスギオでOHされたエンジンを搭載し、見た目も中身も万全な心臓部。フィンが整えられたBEET製のジェネレーターカバー&ポイントカバーが美しく、ブラック塗装の上に精緻なシルバーのラインが際立っている。
そこに組み合わされるのが、程よく灼けた“ヤシメガ2”マフラー。使い込まれた焼け色が絶妙な味を出しており、コールマシンとしての実績を物語る。外観の華やかさに反して、エンジンまわりの仕上がりは極めて実直だ。
リアフェンダーの下には、所狭しとステッカーが並ぶ。昭和の暴走文化を彷彿とさせるチームロゴから、パーツメーカー、地元ショップの名まで、まさに“走る履歴書”といえる情報量だ。なかでもオーナーの一番のお気に入りなのは「カワニー」のステッカーとのこと。
シートは川口の墓石三段。少し控えめな高さながらもフォルムの美しさは際立っている。ベージュの色味と黒のパイピングが絶妙で、派手すぎず、かといって埋もれることもない。まさに“静かなる主張”だ。
BEETのテールカウルも絶妙な角度でアガっており、全体のラインをスムーズにまとめている。そしてテールランプはBEETのスモークレンズに。純正品ではBEETの文字が入る場所に「GARAGE BA」のロゴがワンポイントで入り、後ろ姿にもぬかりなし。グループロゴやステッカーも全体カラーにマッチしていて、これらがただの飾りではなく、マシンの一部としてしっかり溶け込んでいる。
ハンドルはCBX純正ハン。アルミのトップブリッジに合わせて塗装を剝いでいるのがオシャレ。テクニカルアジャスターも色味を合わせてメタル感を強めている。
追加装備やカウル内のステージは装飾も最低限に抑えられ、バランスを崩さないよう絶妙な配置になっているあたり、オーナーの美的センスが光る。
改めて全体を眺めると、かつてのF1マシンを思い出させるような佇まいだ。加えて、カウルやタンクに貼られたステッカーがこのマシンのルーツとスタイルを物語っている。どこを切り取っても“らしさ”が詰まった、旧車會の魂を体現するような一台だ。