その昔、「単車の外装は年度ごとに変えないといけない」という、平成生まれにはちょっと信じられない法律があった。外装を見て、それが何年式なのかを判別するためだったそうだが、メーカー側は随分な負担を強いられたものだ。
ただ、それが一方的に負担だけだったかといえば、そうでもない。カワサキのDOHC並列4気筒バイク・Z1/Z2はそのカラーリングも人気の要因となり、火の玉(ファイヤーボール)やタイガー、玉虫、など、外装個々に愛称が付けられ、それぞれの年式にファンが付くようにもなった。
特に火の玉はカワサキを代表するカラーとなり、ゼファーχが販売停止になる際には、スペシャルエディションとして火の玉外装が販売されたりもした。
やがてカワサキのメインカラーはライムグリーンに移行していくのだが、それ以前のカワサキを表すスタイルとして人気が高かったのが、前述のZ1/Z2外装であり、SSのレインボーラインであった。
このレインボーライン、69年のデビューから2年後の71年の350と、翌72年の車両に用いられたもの。SSのデザインとしてはのちのバナナライン、刀ラインなど様々あるが、このレインボーラインはアップテール人気とも相まって、人々にカワサキの存在を知らしめる存在となった。
そして、こちらのゼファーである。タンク、そしてテールに描かれた意匠こそが、レインボーライン。レインボーといっても使っている色自体は2色プラス縁取り程度。特に7色を使っているわけでないのも、当時と同じだ。
テールカウルが当時のアップテールを彷彿とさせるスタイルになっているのも素晴らしい。
一番見せたいのもライン外装のはずで、これを際立たせるため、全体のつくりはシンプルに。その分、ラインの作り込みをしっかりとさせているのが特徴だ。カワサキの系譜は、こうして受け継がれていく。