現代の戦闘機はいかに目立たなくするかを考慮したカラーリングが基本だが、昔は敵味方や所属部隊をはっきりさせるため派手なカラーリングを施すのが常だった。第一次世界大戦で活躍したドイツのエースパイロット、マンフレート・フォン・リヒトホーフェンは自機を真っ赤に塗り上げたため、バイク乗りにはお馴染みの「レッドバロン」というあだ名がついた。
このRZは、かつての戦闘機を思わせるインパクトてんこ盛りのデザインで、遠くからでも「なんかすごいの来たぞ」と分かるほど一度見たら忘れられないオーラを放っている。
まず目を惹くのは、徹底した「青」へのこだわり。ボディやカウルなどはキャンディブルーに塗られ、エンジンをはじめとするシートやグリップ、ハンドルバーに至るまで、色を変えられる箇所はとことんブルーにする徹底ぶりには驚かされる。
そして随所に入れられたシルバーの爆発ラインが、シルバーラメの輝きと相まって引き裂くようなエッジさを感じさせるだけでなく、戦闘機のノーズアートのようなシャークマウスが遊び心とシャープさを演出してくれている。
シャークマスクに爆発ラインとくれば福岡仕様を想像させるものだが、キャンディーブルーに銀ラメのツートンカラーという色彩が、まったく別のジャンルの仕様として表現されているのも面白い。
「ブルーへのこだわりはフロント周りでも徹底している。RZRのホイールやディスクローターのインナーハブ、ブレンボキャリパー、スタビライザー、さらにはYAMAHAのロゴ入り三又カバーまで、すべてが青で統一されていて見事なまでの一体感だ。
しかも、フェンダーにはタンクやカウルと同じシルバーのラインが入り、全体のデザイン性をさらに底上げし、車体全体の緊張感と美しさを引き締めている。
アスファルトを斬り裂くような鋭い意匠のアンダーカウルに包まれたエンジン周りも、もちろんブルー一色だ。クランクケースカバーやウォーターポンプカバー、さらにはフレームやステー類まで手を抜かずに塗り込み、心臓部の存在感を一段と際立たせている。
バック気味にセットされたステップはXJRからの移植で、ライディングポジションに独特の“構え”を与えてくれる。さらに目を奪うのが、仕上げも荒々しい大径チャンバー。表面の焼け色が、走り込んできた歴史と獰猛な性能を物語る。
リア周りにはウエダ改スイングアームが鎮座し、剛性感を大幅にアップ。ブレンボキャリパーでディスク化されたリアブレーキも鮮やかなブルーで統一されている。
そそり立つ三段シートも、もちろんブルー一色。塗装だけでなく生地の艶感まで統一され、車体全体のテーマカラーを一層引き立てている。その広大なシートの背面には多彩なステッカーが貼られ、オーナーのアイデンティティと誇りを堂々と発信する“御旗”のような存在感を放っている。
そして数少ない“青じゃないパーツ”が、リアのテールまわりにあった。そこに収まるのは、昭和の走り屋や族車乗りにはお馴染みの「チェリーテール」。日産・チェリークーペのテールランプに由来するこのパーツは、Z2タイプのテールカウルの曲線に吸い付くように収まり、ブルー基調の中で鮮烈な赤を差し込むアクセントになっている。
オーナーの心意気が込められた徹底的なペイントへのこだわりと、隅から隅まで手の行き届いたこのマシンは、どこもかしこも全体がショーアップ効果を意識した構成でガッチリ固まっている。街中を軽やかに走り抜け、停まれば逆に誰も近寄れない威圧感。まさに現代に蘇った“青い撃墜王”といった佇まいである。
■オーナー:HK
■チーム名:HK Koobo