GSというバイクが爆発的に人気が出たきっかけは、神奈川の暴走族がこぞって愛用したことにある。そもそもはアクセルを回しても激しい音が出ない特性があることから全国的にはむしろ不人気車であったが、“吸い込み”という技術が「発明」されたことで、権力者でなければ乗ってはいけない地域があるほどの人気車種にまで上り詰めたのはご存じの通りだろう。
その神奈川の仕様を示すカスタム手法のひとつに「銀ラメ」がある。
今でこそラメ塗装は珍しくないが、自家塗装が当たり前だった当時の状況を考えると、ラメ塗装そのものにかなりのステイタスがあったのは容易に想像できるところ。その銀ラメを全身にまとっているところにも、神奈川仕様のプライドを感じさせる。
また、外装はGSXに換装した、いわゆる“Gザリ”仕様。タンクからサイドのアルフィンカバー、そしてシートカウルからバックステップにいたるまで、外観は限りなくGSXに寄せているのが分かる。かなり芸が細かい。
芸が細かいのは外装に留まらない。ホイールは前後とも星キャスからセブンスターキャストに換装され、フロントはダブルのフローティングディスクにブレンボのキャリパーを装着。
リアはウエダレーシングのスイングアーム&トルクロッドを配し、リアサスは別タン付きのオーリンズを装着と、足回りはかなりレーシーな作りに変更がなされている。
フルカウルはエンブレム付きのイノウエ当時もの。ポイントカバーは「INDIAN RACER」とあるが、あのインディアン製? インディアンにポイントカバーがあるかどうかは不明だが、刻印されているレアものということは間違いない。
そしてエンジンはバレル研磨なのかバフ掛けなのかは不明も新品かのようにピカピカ。めっちゃくちゃ綺麗な状態を保っている。
タンク上部には憂国の作家・三島由紀夫をエアブラシで描いて個性をプラス。さらなるオリジナリティをつけ加えている。