ヤンキーのイメージ、といえばどんなことが思い浮かぶだろうか。
人それぞれだが、ヤンキールックと言われるイカつい服装やカスタマイズした単車、それに乗っての暴走行為、凄まじくも華々しい喧嘩、分け隔てない飲酒・喫煙など、いろいろあると思う。
今回はヤンキールックの中でも「ヤンキー 眉毛」というキーワードに焦点をあてて、全国の「ヤンキー=眉を細くする」文化が流行るまでにいたった経緯について探っていくとしよう。
ヤンキー文化における細い眉毛の起源
イギリスのグラムロックが発端
調べたところ、1960〜70年代のイギリスにまでたどり着いた。
1960年代後半、イギリスではグラムロックの登場により、音楽とビジュアルの組み合わせが広がり、日本においてもジャンルの多様化の火付け役となった。
そして1970年前半からはイギリス人は男女問わず一般的な化粧よりも濃い化粧をし、貴族のような衣装を身につけて演奏するようになった。
グラムロックは男女の伝統的な性役割に挑戦状を叩きつけ、細い眉毛を含む女性的なメイクを男性が行うという美学を体現したカルチャー。この時代は若者文化が強い反骨精神とともに個性的な自己表現を追求する時代であり、性別の境界線をあいまいにすることが美学として受け入れられた時代でもあった。
グラムロックの過激なスタイルは社会的規範に対する挑戦であり、細い眉毛はその一環として自我の表現として確立したワケだ。
日本ロック界への影響
そして、日本では1980年代から1990年代にかけて若者たちはより個性的で独自の自己表現を求めるようになる。このころ登場したビジュアル系バンドが取り入れたグラムロック調のメイクやスタイリングは、このような時代のニーズに応える形で発展する。
80年代当時の代表的なアーティストとしては、X JAPANやBUCK-TICKなどが挙げられる。彼らはビジュアル系バンドの先駆けとして、そのドラマチックな楽曲とパフォーマンスで多くのファンを魅了する。そしてカリスマ的な存在として今でもその人気は衰えていない。
この後に続くように表舞台に現れた90年代のGLAYやLUNA SEAなどは、ビジュアル系シーンを代表するバンドとしてさらに若者文化に大きな影響を与えた。
時はまさにバブル全盛期。経済が急成長し、イケイケな時代であった。ビジュアル系バンドの与えたインパクトをモロに喰らった日本の若者たちは、ド派手なヘアスタイルやメイク、独特の衣装を、個性的な自己表現の象徴として捉えるようになる。
そして遂にはひとつのカルチャーを築くまでに至ったのだ。
映画やドラマ・漫画への影響
そのカルチャーに付随して、ドラマや映画には社会の荒波に抗うような作品が多く見受けられるようになった。
というのも、ビジュアル系バンドとヤンキー漫画は、どちらもサブカルチャーとして既存の社会規範に対する反抗的な姿勢を特徴としていて、どちらも若者の自由や個性を強調している。
意外なことに、共通点が多いのだ。
ロックシーンはヤンキーにパッションと憩いを与え、ヤンキー文化は一部のロックバンドに影響を与え、そしてビジュアル系バンドもヤンキー文化の派手さや大胆なスタイルを取り入れていった。つまり、お互いに影響を与え合い、お互いに成長していったのだ。
そして『ビー・バップ・ハイスクール』や『湘南爆走族』『ろくでなしBLUES』『今日から俺は』『特攻の拓』といった数々のヤンキー漫画の代表作がこの時代に集中して登場している、と言えばいかに「濃い」時代だったか分かるだろう。
これら漫画は大人気を得たことで、ドラマや映画としても制作され、さらに影響力を高めることとなった。
そして、「細い眉毛=ヤンキー」という概念が、ついに確実なものになったのだ。
一般生活への波及効果
こうして細い眉毛は、特に1990年代にヴィジュアル系バンドやポップアイコン、映画化までされたヤンキー漫画によってさらに広められ、一時的なトレンドとして大きな人気を獲得した。
その後、時代と共に変化し、より自然な太さや形が好まれるようになる。
その中でも、細い眉毛スタイルが美容やファッション、メディア業界に与えた影響は最も大きかった。
美容業界への影響としては多種多様な個性の受け入れから美容製品の発展に貢献した。平成から令和にかけ男性の脱毛や化粧品への関心が高まったことで市場が拡大、男女ともにそもそもの美意識も変化させるきっかけにもなったのだ。
ファッション業界においても「男性は男性らしく・女性は女性らしく」という認識が薄まり、ユニセックス商品が多く見られるようになる。
余談だが、眉毛が細いと海外では「ゲイ」と思われることもしばしばあるとのこと。
LBGTの方は仕方ないにしろ、思いがけないことで一般の人が勘違いされるケースもあるので注意してほしい。
細い眉毛スタイルの変化と現代の解釈
現代において細い眉毛スタイルは文化的象徴や独自性の表現の手段として再評価されている。
細い眉毛の流行は、性別に関する固定観念にも影響を与え、特に男性の間では従来の男性らしさの概念に挑戦することになった。
これにより、ジェンダーに基づく美の標準に柔軟性が生まれ、男女問わずさまざまな美容やスタイリングが受け入れられるようになったとも言われている。
また、SNSやインフルエンサー文化の影響もあり、様々なトレンドが共存し、個人が自分を表現するための無限の可能性を引き出し、社会全体が個性の表現の場として受け入れられるようにまでなったのだ。
今後のトレンドの変化
今までは感覚や流行から自分の見た目や個性を合わせることがセオリーの時代だった。
今後はより、流行が自分の中で文化として浸透することでこだわりを持たないことがこだわりになるだろう。
そのときに自分は何に生きがいを生み出せるかが、これまで以上に大事な世界になっていきそうだな!
まとめ
単に中学生がイキがって眉毛を細くしていた程度に思っていたが、調べてみるとそれぞれの時代の人々の考え方やさまざまな価値観が綿々と連なる中で「ヤンキーの細い眉毛」がかなり重要なポジションにいることが分かった。
日々の生活の中の小さな事柄に目を向けることで、大きな人生の転機に繋げられるかもしれない。だから日常の1つ1つの出来事を大事にしていこうな!