レアもの、当時もの、珍品、逸品。他人と違う個性を示すために様々な創意工夫を行ってバイクをカスタムするのが旧単車好きの手法だ。
独創性を重視する方もいれば、一見すると純正と大きく違わないように見せながら、実は塗装方法がまったく違った方向からのアプローチで、というような一見すると分からないくらいのトリッキーな仕様を好む方もいる。ひと口に個性的、といっても今は個性の捉え方も多様化している。
こちらのサンパチは、まさに唯一無二のアイテムを装着している個性全開のバイクだ。
カウルは、あきらかに低年齢層の手による“書き込み”がなされている。まず間違いなく、オーナー氏の子供さんによるものだろう。動物の顔の横に「犬」など、ちゃんと解説をしたり、ブレ止めのビスが気になって顔にしてしまったりするのは、間違いなく子どものそれ。全体的に脈略がないのも子供絵画の特徴だ。
子どもが勝手に描いてしまったというよりは、ペンを持たせて「何でも書いていいよ」と勧めた可能性が高い。
これは同じものは2度と手に入らない、一点ものの激レアアイテム。絶対に事故は起こせないし、家に帰りたいという帰巣本能も刺激することだろう。バイクに対する愛着も増すに違いない。思いつきそうで思いつかない、素敵なアイディアだ。
このサンパチのキモは、カウルだけが売りではないという点。
フロントフォークをフォークブーツ付きの初期型に換装し、ホイールもスポークホイールに。さらにはBEETタイプのバラチャンを装着し、赤で塗装。さらに今では激レアアイテムと化したマッドガードも車体後方でたなびいている。
そして、このイノウエタイプのフルカウルは、内側には金の文字で「君が代」が描かれていたりと、細部に仕掛けも多い。カスタムの方向性はひとつではないと、改めて認識させてくれるバイクだ。