本当にごく稀に、既成概念に全くとらわれない、完全オリジナルなスタイルのデザインを施したバイクが存在する。「バイクだから」「族車だから」という枠が必要な場合もあるが、旧車會のカテゴリーで製作する単車であれば、既成概念も時として足かせになる。
ここに取り上げたサンパチも非常にコンセプチュアルで、デザインというよりアートに近いかもしれない。
ベースとなる石目のペイントの上に描かれているは般若心経。心得のある知人に書いてもらったそうだが、これはまず外装全体に文字を描いてから、その他の部分を上書きしたもの。キャンディレッドで塗装されている部分も、下には文字が埋まっている。
外装のカラーリングで赤いラインは反射テープを使用し、ゴールドのラインはすべて金箔を使用。さらに反射テープで挟まれた間の部分のウロコのような柄は金箔をねじって貼り付け、金箔の上からキャンディで塗装したもの。連続している図柄だが、手仕込みのため柄が完璧にそろっている訳ではないというのが、ミソだ。
さらにその上から、金で仏を描いている。ライトの左右には阿王・吽王の仁王像を、車体の左側面は菩薩・観音、右側面には守護神を描いて喜怒哀楽を表現しているのだという。
エアブラシではなく、あえて箔押しにすることで、和の世界観をより強めるという狙いがある。タンク、カウルで図柄が違うのもポイントだ。
そして、三段シートの形状も独特。座面はGT380純正と同じデザインを用いながら、三段の背もたれ部分はステッチなどを加えずフラットな形状に。これもあまり他に類を見ない、独特なスタイルとなっている。カラーリングのチョイスも絶妙だ。
今後はフレームやエンジン回りも仕様変更を加える予定。いずれ、さらなる進化を遂げた真の姿を拝める日が来るのも、そう遠い話ではないだろう。