GSやGSX系のフロントブレーキに装着されている“ダブルアンチ”。言葉としては知っているし、どのパーツを指して言っているものかも分かる。
ただ、これがどんな働きをしていて、何に使われているのか。すべて正確に把握している方は、意外と多くないのでは?
もちろん、スズキ党は知っているだろうが、ずっとホンダ、ずっとカワサキという方にとってはあまり馴染みがないといえばないので、特に興味を持っていない、というケースもあるだろう。
そんな“ダブルアンチ”を、今回は深堀してみたい。
まず、パーツとしてはこの部分。ボトムケース先端に付いている、ローソクのようなパーツだ。
正式名称は“アンチノーズダイブフォーム”(=ANDF)。
急ブレーキをかけた際にフロントフォークの沈み込みを防止するという、画期的なパーツだ。
最初はGSXの後期Eに搭載され、その後GSX400F、そしてGSX400FSへと受け継がれていった。シングルディスクだったEのカタナや、初期のGSX400FはANDFも左側だけに付いていた。
俗にいう“片アンチ”がコレだ。
そして、ダブルディスクになったFの後期からは、左右両方にこのANDFも装着される。ここでようやく“ダブルアンチ”となるわけだ。
だからGSにこの“ダブルアンチ”が付いている場合は、FまたはFSからの移植ということになる。
メインはダブルディスク化で、その際にFまたはFSのパーツが“一緒に付いてきてしまった”だけ、という方もいるだろうし、スズキらしいルックスが得たくて付けているパターンもあるだろう。
いずれにしても、GSにとっては改造しないと手に入らないパーツであることは間違いない。
ではなぜ、各社横並びのシステムにならなかったかというと、メリットとデメリットの、両方があるシステムだったから。
フロントが沈み込まないことで急にバランスを崩したり、いわゆる“ジャックナイフ”的な事故というのもは減少される。
ただ、それはあくまで直線での話で、コーナリングなどで前輪に加重させたい場合には、これを妨げてしまうことになる。
スポーツバイクとしての魅力を削いでしまうことにもなるため、一般的に普及するまでにはならなかったが、それが逆に80年代限定という時代性を感じさせるアイテムになったのは間違いない。
《結論》
ダブルアンチの“アンチ”とは、当時のスズキが開発したブレーキシステム“アンチノーズダイブフォーム”の通称
フロントフォークが沈み込まないメリットがある
流行りはしなかったが、メカとしては画期的なアイディアだった
執筆者:i-Q JAPAN編集部