アメリカン風味をまとったGS400L、通称“エル”。登場当時からタマ数が少なく、今となっては中古市場でも見かけること自体が珍しい存在だ。その希少性もあって価格は右肩上がりで、現状では200万円を下回ることはないと言われている。
そんな“エル”を手に入れたオーナーが、ただノーマルのまま乗ることは、まずない。むしろ「ここからが本番」と言わんばかりに気合いを入れて手を加えるのが、旧車會における“エル”の正しい処方の仕方である。今回紹介する一台もその典型だ。
まず真っ先に視線をさらうのは、この強烈なカラーリングだ。キャンディグリーンに塗られたタンクは白ラインがアクセントとなり、旧車らしいクラシカルさと旧車乗りならではのユーモアを両立させている。
対してフレームは目の覚めるようなビビッドレッド。緑×赤の補色関係が生み出すコントラストはなかなか強烈だ。
さらに足元を固めるのは、艶やかなゴールドのBEETキャストホイール。そこに組み合わされるリアのオーリンズサスは、ブラックボディで引き締め効果を発揮。豪華な配色に“堅実さ”を加える役割を果たしている。
そのフレームに収まるエンジンは、とことん磨き上げられていてカラーリングに負けない輝きを放っている。
ワンズ管ハス切りバージョンのマフラーがフレームを這うように伸びていく姿も、まさに機能美と造形美の融合。メカそのものの仕上げが行き届いているからこそ、この心臓部は見る者を惹きつけるのだ。
フロント周りは、ハンドルをGSしぼりに換装。また、トップブリッジはアルミ削り出しに換えられており、剛性感を増しながらもビジュアル的にはレーシーな引き締め効果を発揮している。ノーマルを活かしつつも、旧車會的センスで要所を押さえたカスタマイズ。これぞ「わかっている」仕上げ方と言えるだろう。
鮮やかなキャンディグリーンのタンクに赤いフレーム、そして金色のホイール。そこへメッキパーツの輝きが加わり、一目でオーナーのこだわりとセンスが伝わってくる。いわゆる“族車”の文法をきっちり押さえながらも、純正のラインや雰囲気を崩さないバランス感覚はグッド。
旧車會的な遊び心と、純正を尊重するリスペクト。そしてその佇まいの中に漂う大人の余裕。そのすべてが詰まったこの“エル”は、旧車カスタムの指針のひとつといっても過言ではないだろう。
■オーナー:ワンズの社長
■チーム名:ワンスター