沖縄県での警察官による“警棒殴打事件”が話題となっている。ことの発端が集団暴走の取り締まりだったことから、世論も「さすがにやり過ぎ」派と「やられて当然」派、「まだまだ手ぬるい」派に二分している状態だ。
なかには「なぜ現行犯で捕まえないんだ!」「弱腰すぎる!」といった批判も見受けられるが、的ハズレな批判がほとんど。ビデオ映像が証拠としての能力を持つようになったため、映像の解析や現場の確認などに時間をかけられるようになり、結果的に検挙率はむしろ高いくらいだ。実際に走っている方も、現行犯より自宅まで令状を持って逮捕に来られる方が嫌なんじゃないだろうか。
反対に、ひと昔前の暴走行為は現行犯でないと逮捕できなかったため、巨大なトリモチのようなシートを道路に敷いたり、巨大なネットを立てたりといった大がかりな逮捕劇が、特に西日本では少なくなかった。
『警視庁24時』的な番組でも、こうした大立ち回りは視聴率稼ぎにひと役買っていたので覚えている方も多いだろう。いや、こうした刺激的な映像が脳裏をかすめるので、現状の姿勢を「生ぬるい」と感じているのかもしれない。
そこで、今回は昭和から平成初期にかけての警察が、どのような手段で暴走族を追い込んでいたのか、まとめてみた。いずれも、当時に追い込まれていた側の元暴走族の方々から伺った話で、多少“盛っている”可能性もあるが、逆に全くの創作でもない、はず。
なかにはテレビ局の密着がありながら『お蔵入り』になったケースもあって、何でもありのテレビ局ですら引く内容だったのは想像に難くない。
路面に水を撒く
字面だけを見たら「別に大したことないじゃん」と思うかもしれないが、これが真冬の東北だったらどうだろう。
場所は主に警察署前。パトカーなどで集会の隊列を追い込んで警察署前に誘導。数十メートルに渡って散水した道路の上を走らせるのだ。当然、路面はツルっツル。滑って転倒するのを待って、逮捕するという寸法だ。
情報提供者の方いわく、「途中でイモ引いたら負け」なんだそう。ブレーキをかけるからコケるのであって、ブレずに真っ直ぐ走れば意外とコケないとか。いずれにしても決死の覚悟が必要だ。
パトカーから乾電池を投げつける
しかも単一電池。こちらも体験者の後日談。後方から投げつけられるのだが、当たったら痛いだけでなく、外れても前方に転がって、障害物の役割も果たす。乗り上げたら転倒の恐れもあるので、物理的攻撃としては、かなり考えられた作戦だ。
ちなみに、これには「拡声器で実家の住所と本名を叫ぶ」という、地味にダメージが残る攻撃がセットになっていたそうだ。顔はマスクで隠しているのだが、バイクと背格好でバレバレなのだ。現行犯が逮捕の条件だった時代の、警察と暴走族の血の通ったエピソードに感じてしまう。
車輪をロックする器具を使う
踏んだらのこぎり状の鉄板が左右から脚を挟む、野生動物に仕掛ける罠をご覧になったことはないだろうか。原理としてはアレと一緒。タイヤが乗ったら、そのまま前輪をホールドする仕掛けを作って、その上を走るように誘導するのだ。
いわゆる“ジャックナイフ”状になって、乗っている本人は間違いなく吹っ飛ぶ。下手したら命の危機にさらされる、危険な仕掛けだ。
メチャクチャにヤバい仕掛けだが、本体が重すぎて設置に時間がかかりすぎるのと、目立ちすぎて誰もその上を通ってくれないというトホホな結末を迎えた、エンターテインメント性だけは高かった装置だった。
六尺棒を前輪に突っ込む
車輪をロックするだけならコレで十分じゃないか、といったかどうかは知らないが、これもやられた側の方から伺ったお話。検問で待ち構えていた警官が、何のためらいもなく前輪めがけて六尺棒の先端をねじ込んできたという。
なんとか交わして事なきを得たが怒りは収まらず、追いかけてきたパトカーの警官に「あぶねーじゃねえか!」と怒鳴ったそうだ。すると警官も「じゃあ止まれ!」ともっともすぎる返答をしてきて、走りながら「まぁ確かにな」と、妙に納得したそうだ。
六尺棒でフルスイング
六尺棒ついでに六尺棒関連の話をもうひとつ。これは漫画『デメキン』に描かれている逸話。
警察の追跡から逃れようと、パトカーが入り込めない民家が密集している地域を走り抜けた際のこと。裏路地の出口付近で待ち伏せしていた警官が佐田さんの顔面めがけて野球のバットのように六尺棒をフルスイングしてきたそうだ。
高さや角度にもこだわって取り付けたばかりのフルカウルが、モノの見事に吹っ飛んでいったそうだ。
現行犯逮捕の恐れがあって走りにくいが走り切ったらセーフの昔と、滅多に現行犯逮捕にはならないが、その後数年間ずっと逮捕のリスクがある現在。どちらが正しいやり方なのか、しばらく答えは出ないのかもしれない。