カルチャー

車内に咲いた一輪の花「水中花シフトノブ」とは? 令和の時代に絶賛リバイバル中!

2024年5月27日

機械のカタマリの中に咲いた可憐な一輪の花……それは水中花シフトノブ

今、「水中花シフトノブ」が何度目かのリバイバルブームを迎えているらしい。
だが令和の街道レーサー乗りにはこの水中花ノブを知らない人も多いのではないだろうか。

水中花シフトノブとは、その名の通り、透明なシフトノブの中にまるで水中花のように花が浮かんでいるパーツ。かつてMT全盛だった1980年代前半、当時のデコトラやスポーツカーのみならず一般車にまで広く普及したドレスアップパーツだ。

最近の旧車人気に乗ってこの水中花シフトノブにも注目が集まっているのだ。しかも当時物が高価で売買されるなど静かなブームになっている。

そんな水中花シフトノブについて、その起源やメーカー、そして現在での入手方法などについて詳しく紹介するとしよう。

水中花シフトノブとは!

 

出典:JINGLING

 

水中花シフトノブの特徴は、アクリルや透明ケースなどの素材を用いて、その中に花を閉じ込めることで有機的な美しさを生み出している点にある。まだ無骨で無機質な内装が多かった時代、ウッドやレザーなど天然素材をあしらったシフトノブが登場する中で、特に水中花シフトノブは車内に一種のアート作品が存在するかのような感覚を与えてくれることで人気を博していた。

またそのデザインは非常に多様で、中に封入される花は本物のドライフラワーを使用することもあれば、精巧に作られた人工花が用いられることも。中には、花だけでなく小さなフィギュアやビーズ、グリッターなどを組み合わせて華やかさを競ったり、花と一緒に照明フロート式方位磁石を仕込んで実用性を狙ったものまで登場していたのだ。

水中花シフトノブはどこから来た?

 

出典:クルマSNSサイト「みんカラ」の「■■■ossi■■■」ブログより

 

水中花シフトノブの起源は、日本のカスタムカー文化に深く根ざしている。

モータリゼーション華やかなりし1960〜1970年代、車のカスタマイズが一大ブームとなり、独自のスタイルを追求するオーナーが増えていた。当時の「内装は自分好みに自由にカスタマイズすべし」という考え方から(この頃からすでにこういう考え方があったとは!)、多くのカスタムパーツが生まれ、その中の一つとしてカスタムシフトノブが登場するのは自然な流れだったといえよう。

そして当時の日本のカスタムカー文化は、アメリカのホットロッドやカスタムカー文化の影響を受けつつも独自の進化を遂げていて、特に日本の美意識や細部へのこだわりが反映されたカスタムパーツは世界中で高く評価されている。

水中花シフトノブもそのような背景の中で生まれ、当初は主にドリフトカーやVIPカーのオーナーたちに愛用されていたそうだ。

水中花シフトノブは正式名称じゃない?!

 


星光産業ホームページより。1983年ごろの「アクリルフラワーノブ」取付け画像

 

最初に水中花シフトノブを考案したのはカー用品メーカー・星光産業。同社によると、1975年に発売を開始した当初は「アクリルフラワーノブ」として売り出していたのだとか。「水中花シフトノブ」というネーミングは公式のものではなかったのだ

おそらく、「アクリルフラワーノブ」が発売されて数年後の1979年に『水中花』というテレビドラマが放映開始、主演の松坂慶子が『愛の水中花』という主題歌を歌っていたため、それにちなんでドライバーたちが勝手に名付けたのではないか、と推測されている。

なお水中花シフトノブは星光産業の現会長が京都に旅行した際、お土産品店で見かけたアクリル模型から着想を得て開発に至ったそうだ。水中花シフトノブの起源は京都にあり?!

 


昭和のお土産の定番だった置物。これがヒントになった?

 

水中花シフトノブの終焉……

 


星光産業ではオートマ用の水中花シフトノブも発売したが、売れ行きは芳しくなかったという

 

しかしAT車の普及に従って、水中花シフトノブの市場は1980年代後半にはだんだんと縮小しはじめてしまう。

前出の星光産業は2001年にトラックのコラムシフト用にアクリルノブをリニューアル、そこからファンの要望を受けて2005年に水中花シフトノブを復刻していている。

当時はコラムシフトのドレスアップ用にトラック運転手が購入してくれたものの、2011年を最後にカタログから外れ、現在はもう取り扱いはないという

水中花シフトノブの入手方法、そして作り方!?

それでも何度目かのブームを迎えている今、どのように入手すればいいのだろうか?

すでに生産終了となった水中花シフトノブは、当時モノにこだわるならメルカリヤフオクなどで探すのも手だが、意外なことにモノタロウで比較的安価で手に入れることも可能だ。もちろん天下のAmazonにも少なからず出品されているので、お気に入りの一品を探してみるのも一興だろう。

 


Amazonでカーパーツを展開しているJINGLINGの水中花シフトノブはバリエーション豊かで安価。チェックしてみよう。画像の製品は2,850円

 


モノタロウの水中花シフトノブラインナップ。オーソドックスなルックスが目を惹く

 


カーパーツメーカー「アルティード」でも水中花シフトノブを取り扱っている。これは本物のランを封入した製品。造花にはない美しさだ。4,500円

 

ただその中にも気に入った物がなければ、いっそ作ってしまうのも手だ。特注の水中花シフトノブをオーダーメイドで制作してくれるメーカーもいくつか存在しているが、中には自分で材料を揃えて作ってしまう豪の者もいるという事実は参考までにお知らせしておこう。

 


クルマSNSサイト「みんカラ」の「9107F」ブログより。手軽な材料を使った詳しい工程が掲載されている

 


ヤフオクでは自作の水中花シフトノブを一品モノとして販売している人もいる。こ、このキャラは……

 

まとめ

水中花シフトノブは、その美しいデザインと独特の存在感で、多くのカスタムカー愛好者に今でも愛されて、そして幾度となくブームを起こしている。その起源は昭和のカスタムカー文化にあり、現在でも当時物だけでなく令和ならではの高品質な製品をオンラインショップや実店舗、オーダーメイドなど、さまざまな方法で入手が可能だ。

かつて古臭いアイテムとして一蹴されていたのも今は昔、自分の車に個性を加えたいと考えているならぜひ水中花シフトノブを検討してみてはどうだろうか。車内に一輪の花を咲かせることで、シフトノブを繰る楽しみがより一層増すことだろう。

   
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