純正のフォルムを大事に乗る全体愛好家? いやいや、とんでもない! 大概のパーツに手を加えながらも全体のバランスを崩さない、むしろ改造マニアの手にかかると、GSもこう変わる!!
かつて、四輪のカスタムをしている方々に「大人は下から作っていく」という趣旨のことを言われたことがある。それも複数から。
たとえばデコトラを飾るときも、若い人は見栄えがするキャブ周りの架装から初めて、ペイントを入れて、サイドバンパーやテールを作って……というやり方をする人が多い。
ところがこれだと耐荷重をひたすら削っていく形なので、最終的には重量の問題で目をつぶらないといけないポイントも生まれてくる。
ところが、フレームを強化し、ボディを強化し……とやっていったデコトラは、完成までに時間を要しても、剛性のしっかりした歪みのない飾りのトラックになるというのだ。
ひるがえって、こちらのGS。一見すると何の変哲もない(こともないが)絶版バイクのようだが、“本当の狂気は日常に潜む”というように、まったく普通じゃないのだ。
オーナー氏がもっとも心血を注ぎ、こだわり抜いたのは“足回り”。先のデコトラではないが、“下から”カスタマイズにとりかかっているのだ。
そこには、安全性の向上というテーマがあった。正直、現代の技術力を加えたら、それほど難しいことではないが、旧車として違和感なく仕上げたかったのだ。これをクリアにするのが大変だった。
具体的に掲げた目標が、トリプルディスク化。フロントフォークはGSX400Fの片アンチに換装し、両面トレンチカットを加えたディスクを装着。
このディスクを支えるためにGS750のキャリパーを用意し、より大きな力でディスクに負荷をかけられるようにした。
さらに、リアはGS1000のハブを流用してリアブレーキもディスク化。ただ、このままだとスイングアームが干渉するので、純正品の一部を加工・修正。国産の初期型GSを違和感なくトリプルディスクに変更してみせた。
なんと、Hリムのホイールも通常はF:1.6JのR:1.85Jのところを、F:2.15JのR:2.5Jという太いタイヤを履かせ、さらなる安定化を図っている。
スキーやスノーボードなどを始める際に、最初に教わるのは「止まり方」。
ストップがキッチリできれば、スピードも怖くはない。ブレーキはスピードの下支え。当たり前だと思っていることに、改めて気付かされるようなカスタムだった。
■装着パーツ
【ハンドル】ハリケーン
【マフラー】ヨシムラサイクロン
【ホイール】RKエクセルHリム
【シート】ジュリアーリ
【リアショック】マルゾッキ
【スイングアーム】純正加工・補強