デビュー以来、リアルな不良少年と圧倒的な暴力を描き続けてきた映画監督・小林勇貴の最新作『ヘドローバ』がVICE PLUSで公開となった。全編iPhone撮影でも話題になった最新作は、一連の作品同様、静岡県は富士~富士宮市近郊で撮られれた今作は、冒頭から旧車會バイクが疾走するスピード感と全編を通して暴力が支配するバイオレンスな世界観をエンターテイメントに落とし込んだ快作。限定先行公開された渋谷UPLINKで、監督の生の声を伺った。さらには、過去作品にも数多く登場するウメモトジンギ&中西秀斗の出演陣と、プロデューサーの西村喜廣氏も参加して、『ヘドローバ』の魅力を語っていただいた。
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――先ほど作品を拝見させていただいたんですけど……
小林勇貴(以下小林) どうでした?
――めちゃくちゃ面白かったです!
小林 あぁ! ありがとうございます!
――この作品はVICEさんからまずオファーがあったんですか?
小林 もう、どんな映画でも構わないから撮ってくれって言われて。
――条件はいくつかあったんですよね?
小林 iPhoneで撮影するっていうのが大前提としてありましたけど、500万の予算のなかでできることなら何してもいいよっていう、太っ腹ですよね(笑)。
――今回の作品は、事前に構想は合ったんですか?
小林 そうですね。悪人ばっかりが住んでいる団地……っていう設定は、だいぶ前から考えていましたね。実は初めて商業映画を撮らせていただける、ってなって、結果的に『全員死刑』になったんですけど、その際にも企画のひとつとして出してはいたんです。
――じゃあ、作品がアチラとコチラで入れ替わっていた可能性もあるワケですね?
小林 可能性としてはありますけど、どうなんでしょう、これ劇場でかけられますかね?
――まず無理でしょうし、かけたとしてもズタボロになりますよね。モザイク処理すればオッケーって問題でもない気がしますし(笑)。
小林 じゃあ、この順番でよかった(笑)。
――この、ヘドローバでいいですよってことになって、監督としてもヨシッというところはあったんですね。
小林 もうもう(笑)。よし、爆弾のスイッチを押したな? っていう(笑)。この爆弾が落っこちてみんなくたばってしまえばいい! みたいな(笑)。
――先ほども仰っていましたが、今回の作品はスマホで全編撮影されています。カメラマンさんがいて、照明さんがいて、っていう“THE映画”と、今回のスマホ撮影とでは撮り方として全く違うものになるんですか?
小林 自分はずっと自主製作で映画を撮ってきて、この前の『全員死刑』が商業映画の一発目だったんですけど、ちょうどその中間って感じがしました。
――そうですか。まったく別物なのかと思ってました。
小林 iPhoneで撮るとはいっても、フレームが付いてたりグリップがあったりっていう、いろんなアレンジが加えられたスマホなんですよ。タイミングによっては照明をやってくれるスタッフがいたりしてたので、“THE映画”を撮ってる感覚でやれてる部分もありましたし。
――撮り方としては、監督のスタイルには合ってるなと感じました?
小林 自分の経験と覚えたてのことの両方あるんですけど、覚えたてを成長させていった方がいい結果につながることが多いんですよ。スマホで撮るのは自主製作の頃の機動力に通づるものもあるし、“THE映画”の現場っぽさも残しつつ撮れるので。
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――やはり今回も悪とか暴力とかがフルパワーで前面に押し出されていますが、これは演じられている方に伺いたいんですけど、ああいったシーンはどういうお気持ちで演じられているんですか?
ウメモトジンギ(以下ウメモト) 暴力に関してはあんまり深く意識はしてないんですよ。プライベートでの経験も豊富ですし(笑)、『逆徒』や『孤高の遠吠え』っていう、監督の自主映画にも出させてもらっていたから感じが掴めていた部分もあるので、平常心で(笑)。
――ハハハハハハ! 知った仲の知った暴力なんですね(笑)。
小林 ウメモト君が中西君を相手に包丁をペトッと圧し当てて「ヒヤッとするでしょ?」って話しかけてから切っちゃうシーンがあるんですけど、もっと全然違う表現になっても不思議じゃないんです。でも知った仲の知った暴力だから(笑)、一発目から「あぁ、これこれ!! この狂気!!」っていう。演じてる二人のテンポも最高だったし、「俺の好きなやつだ~」って嬉しくなっちゃいました。
ウメモト さっきの監督の話じゃないですけど、新しい経験もさせてもらいつつ、今までの経験も生きた感じですね。
小林 二人が切りつけ合うシーンあったじゃない? あれ相当ギリギリまで攻めてなかった?
中西秀斗(以下中西)その辺はやっぱり知った仲の知った暴力ですよ(笑)。
(一同爆笑)
――今回も撮影は静岡県富士市ですよね? この、土地に対する思い入れもあるんですか?
小林 正直、場所に対してはそれほど思い入れはないんです。どちらかといったら、出てもらうウメモト君や中西君への思い入れですね。彼らは本格俳優じゃないんですけど、そこにプロの芸能人をぶつけて生まれる相乗効果を期待しているところがあって、どうしても彼らを入れたかったんです。それがいい結果を生むはずだっていう信念があったんですけど、彼らは普段地元で仕事もあるから都内がロケ地だと、頻繁には呼べないんですよ。土地よりも人、ですね。
――プロの芸能人という部分では、突然、品川ヒロシとか板尾とか出てきて、ビックリしたんです。
小林 そのへんは西村(喜廣・今回の映画のプロデューサー)さんが声をかけてくださって。
西村 出演シーンが終わったあと、ちょうど近くで窪塚洋介君が舞台挨拶に来てるって聞いて。品川君が「会いたいなぁ」っていったら、みんなが「じゃあ、送ります!」ってなったんだよね。「俺、なんか拉致られてるみたい」って笑ってましたけど。
小林 『孤高の遠吠え』が『ドロップ』を乗せて『IWGP』に会いに行くっていう(笑)。
――ハハハハハハハハ! すごい! 奇跡だ!
小林 ドロップ世代だから、品川監督のファンが多いんですよ(笑)。
――あんまり詳しく話すとネタバレになっちゃうから言いませんけど、今回は旧車バイクの出番は、それほど多くないですよね。i-Q JAPANとしては、そういった作品もぜひ期待したいんですが。
小林 でも、日本映画って元々はカーアクションとかすごかったじゃないですか。ああいう映画が脚光を浴びる時代が来るんじゃないかと思っていて、全国の映画館でかかるような、ちゃんとした映画でそういうバイクが出てくる作品を撮ってみたいですね。
中西 人とバイクはすぐ集まりますよ(笑)。
――本当にすぐ集まりそうですね(笑)。
小林 ああいうバイクをいっぱい出して、『サムライダー』を撮りたいんですよ。
――それはぜひ拝見したいです!
小林 ずっと言い続けているんですけどね。いつか撮ります!
――その時は、絶対またお話を伺いに来ます!
【ヘドローバ】は、現在、VICE PLUSで視聴が可能です。
VICE PLUSは、インターネットメディアの『VICE JAPAN』が“「作家の信念」を応援する”ために立ち上げた、新たなコンテンツ。
趣味をも凌駕するオリジナリティー、才能溢れる新しいクリエイター、そしてインターネット空間の果てに追いやられてしまった数多の名作と迷作。今見るべき映像・作品を、発掘し、紹介します。(サイト前文より)
その口火を切ったアーティストが小林勇貴監督であり、中核をなす<ケータイで撮る>映画の第一弾が『ヘドローバ』なのだ。さらに、小林監督が本物の不良少年たちを起用して撮影してきた過去の作品も一挙公開。
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