初めてまたがった単車は
誰もが驚くスズキの一台
理人 自分はプライベートでも大変かわいがって頂いておりまして、昔からずっとお世話になりっぱなしの方です。
伊藤 そんな。止めてよ。
理人 この業界で知らない人間はいないでしょう。伊藤建志さんです!
伊藤 伊藤です。よろしくお願い致します。
理人 全日本(零心愚連盟)の、実質的なTOPまでつとめられた建志さんですが、出身は横浜のどちらだったんですか?
伊藤 横浜の鶴見ですね。
理人 建志さんのさらに上の世代から、多くの先輩方が守ってこられている街ですよね。実際にはどんな街だったんですか?
伊藤 う~ん、とりあえず治安は悪いです(笑)。
理人 暴走族のメッカともいえる街ですから、本当に激戦区だったと思いますが、そのなかで建志さんはどのように暴走族と触れられたんですか?
伊藤 兄がやっぱり暴走族で、地元のチームのリーダーをやったりしていたんで。すごく身近な存在でした。
理人 お話を伺えば伺うほど建志さんのエリートっぷりが浮き彫りになりますが、初めて跨った単車って、覚えていらっしゃいますか?
伊藤 GSXのインパルスかな? ガキだったから、乗れればいいやって感覚だった気がする。
理人 何歳くらいの話ですか?
伊藤 中学生だったかな?
理人 大変生意気なんですが、中学生で単車に乗るのは……
伊藤 ハハハハ。インターナショナルな街だから、国際免許で乗れたんです(笑)。
理人 ハハハハハハ! そこは深く追求しないことにします(笑)。
伊藤 仲間より早く大人になりたかったんでしょうね。
理人 神奈川の暴走族は大人びてましたからね。とりわけ横浜というのは全国の暴走族の憧れの場所であり、憧れのスタイルであり、憧れの単車であり、当時単車に跨ったことがある人間であれば、誰もが意識する街でしたし。
伊藤 住んでた人間からすると、ガラの悪い街だとしか思えなかったけど(笑)。
全日本麗心愚の集会は
走り方から違っていた
理人 いきなり話が飛んじゃって申し訳ないんですけど、横浜の集会って、なんであんなにペースが速いんですか?
伊藤 なんでなんでしょうね? 繁華街とか、その近くを通りますからね。あんまりもたもたしていると、それだけ危険を抱え込むことになるとは思ってたけど、伝統的にああいうスタイルでしたから。
理人 なるほど、伝統的に受け継がれているから、特に疑問に思うこともなかったんですね。
伊藤 当時は比較する対象がなかったですからねぇ……。最初はなんの疑問も持たずに、ただ必死についていってました。
理人 そのときはもう埼玉の人間だったんですけど、中学時代の親友の誘いで浜連の集会にお邪魔させて頂いたときに、もう……本当に一瞬ですよ? 一瞬だけ隊列を離れて立ちションして戻ったら、気配すらないんです (笑)。
伊藤 そうなっちゃうと思いますね(笑)。
理人 なんて速いんだ! ってビックリしたんです。
伊藤 逆に少し大人になって、ヨソの地域の集会に招かれたとき、逆に「え、なんでこんなに遅いんだ?」って驚いた記憶はありますよ。
理人 その集会のスタイルですけど、横浜連合の集会は、毎週決まった日時にやっていたんですか?
伊藤 やってました。
理人 当然、警察もそれは把握しているわけですよね?
伊藤 してたんじゃないですか? でもガキだったから『捕まってナンボ』のところもありましたから。
理人 幹部会もされていたんですよね?
伊藤 やってましたよ。いついつドコを走るとか、決めていました。
理人 各チームの頭が参加するんですか?
伊藤 頭じゃなくてもよくて、代表者って感じでしたね。
理人 そこでルートを相談するんですか?
伊藤 いや、そこは事前に決まっていて、ルートを書いた紙を受け取るんです。
理人 メチャメチャ欲しいです、その紙!
伊藤 え、手書きでチョチョッと書いた程度ですよ?
理人 それがいいんです。そのリアル感というか、ライブ感というか。
伊藤 その辺が他の地域とは違うかもしれないですね。
理人 全く違うと思います! 大変に失礼なことを伺うんですが、その紙が警察側に渡ってしまうってことは……。
伊藤 ああ、ありますあります。全然ありますよ。
理人 それってどんなシチュエーションなんですか? 想像がつかないんですけど。
伊藤 警察も分かってるんですよ、いつのどこでミーティングがあるとか。で、ミーティングのあとを狙って補導するんです。
理人 はぁ~~! 国家権力が未成年にとる手段じゃないですよ。もう、無視できない存在だったんですねぇ……!
伊藤 我々も幹部会終わりは注意するんですけど、その辺の知恵比べは大人の方が上手でしたね。
伝説の全日本の集会は
こうして行われていた!
理人 そういう時はルートを変更されるんですか?
伊藤 変える時もありましたけど、変えると見せかけて変えないっていうこともありました。
理人 裏の裏をかくわけですね?
伊藤 っていうより、そう毎回引いてられないって思ったんじゃないですかねぇ。ガキだから、その辺の融通が利かないんですよ。
理人 そんな謙遜なさらないでください。超カッコいい話じゃないですか!
伊藤 そもそもこっちが警察に睨まれるようなことをしてるんだけど、でも「大人はやっぱりズルい!」みたいな、変に気持ちが乗っちゃってたんでしょうね。
理人 あと、全日本系の集会といえば、流れ合流流れ解散が有名で……あれは本当に凄いしカッコいいなぁと思っていましたけど、そういうことも紙には書いてあったんですか?
伊藤 だいたいドコソコに何時とかは、書いてましたね。
理人 万が一、集団からはぐれた際の復帰ポイントにもなるんですね。
伊藤 そうですね。慣れてきたら、ルートを見たら頭の中でコースのイメージはできるから何となく合流できるようにはなるんですけど、時間は分かっていた方がありがたいですよね。予定の場所でただ待ってるだけだと、先にパトカーが来ちゃう可能性もあるし(笑)。
理人 本当に、1分とズレないじゃないですか。
伊藤 自分たちは当たり前になってましたけど、ヨソから来られた方には驚かれましたね。
理人 建志さんの時代の集会で、MAXどのくらいの台数だったんですか?
伊藤 横浜だけで500くらいじゃないですか?
理人 ケツにいたら、確実に先頭は見えないですよ。
伊藤 ケツから先頭に出るだけで、そこそこ時間がかかってました。
理人 どのくらいの時間、走っているんですか?
伊藤 3時間くらいだったかな? 同じ集会に参加していても、会えない知り合いもいましたよ。
後編へ続く!
執筆者:i-Q JAPAN編集部