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「特攻の拓」作者・所十三&岩橋健一郎の最強タッグが「ドルフィン」を語る! 令和のヤンキーマンガの担う役割とは?

2023年3月29日


「疾風伝説 特攻の拓」(以下、「特攻の拓」)の復刻版が発売され、若い世代を中心にヤンキー、旧車ブームがにわかに起こっている。そのため「特攻の拓」の作者である所十三氏がヤンキー界の重鎮・岩橋健一郎氏の暴走族時代のエピソードを描いた「ドルフィン」もまた、ブレイクの兆しを見せているが……令和のヤンキーマンガの決定版である「ドルフィン」の執筆時におけるマル秘エピソードを存分に語ってもらった!

 

―― 昭和の名作ヤンキーマンガ「特攻の拓」が再び脚光を浴びているなか、現在の所先生は岩橋健一郎氏の暴走族時代のエピソードをマンガ化した「ドルフィン」を連載されていて、話題になっています。

岩橋氏 以下、岩橋 私から言わせてもらうと、「ドルフィン」ってリアル版の「特攻の拓」なんですよ。横浜を舞台にしているのも同じだし、時代背景もほぼ一緒。前回の所先生の言葉を借りると「特攻の拓」はファンタジーですが、「ドルフィン」はリアル版って考えています。

所氏 以下、所 マンガの中の時系列で言えば、「ドルフィン」は「特攻の拓」で言うと拓(浅川拓)よりも年上の世代、誠(半村誠)や夏生(真嶋夏生)ら、天羽時貞を主人公にした外伝の「Early Day’s」に出てくるメンバーたちが中学生くらいのころに憧れていたのが「ドルフィン」に登場する岩城源太郎(岩橋氏をモデルにした主人公)の世代なの。言ってみれば彼らは岩橋さんに憧れている感じになるね。

岩橋 それで言うと「ドルフィン」は「特攻の拓」のエピソード0みたいな感じですか?「クローズ」にも「クローズZERO」があるみたいに(笑)。

―― 「ドルフィン」は「特攻の拓」と比べるとシリアスなシーンが目立つ印象がありますが、所先生としては「ドルフィン」執筆時に特に意識していることはありますか?

 「ここで泣かせるシーンが欲しいな」と思って入れることはあるけれど、「ドルフィン」は岩橋さんの思い出話をベースにしているので、特に意識してシリアスにはしていないです。面白いエピソードをいくつかピックアップして、こんなストーリーにしたらこのキャラクターが際立つかな?という形で描いています。

岩橋 所先生は私の地味な思い出話をしっかりと演出して遥か上の作品に仕上げてくれる。総合演出、脚色すべてが超一流なんですよ! さっき見せていただいた最新話のネームでもガンガン来ましたよ!

※i-Q JAPANをご覧の皆さんに特別に"まだ未掲載の原稿"を少しだけお見せします

―― 岩橋氏にとってはご自身のエピソードが描かれているので、どんな話かはわかっているけれど……?

岩橋 それでもガンガン来る。わかっているのにその上を行くんだよ。カット割りなのか、演出のテクニックだろうけど「こうやって魅せてくれるんだ!」というのがね。

 岩橋さんの思い出話を読者に伝えて、より楽しんでもらうようにするというのはマンガを描くテクニックの部分になるので、そこは私も30年ほどやらせていただいているのでね(笑)。

岩橋 30年っていうけど、所先生は第一線の漫画家として30年のキャリアを誇るんだからね! 先生には失礼な表現かもしれないけど、例えるならお寿司屋さんと同じ。どんなに素晴らしいネタを使っても素人が握るとおいしくないけれど、究極の板前さんならたとえネタが普通でもとてもおいしいお寿司になる。それくらい別格なんだから。

―― 岩橋氏の思い出話なら、最高のネタになりますよね。

岩橋 いえいえ。私のエピソードは横浜の80年代の暴走族を経験した人間の“あるある話”ですよ。至ってフツーのもの。それを所先生に素晴らしい作品に仕上げてもらっている感じだよ。

 全然あるあるじゃないですよ(笑)! もちろん打ち合わせで聞いた思い出話をそのまま描くと伝わりづらいところもあるけど、そこはうまく変えてね。というのも実際の人間関係って複雑で、運動会の紅組/白組みたいにスパッとは分かれませんよ。もっとグチャグチャしている。それをそのまま描いてしまうと読者は付いていけなくなるので、私はそれを読みやすく整理しているだけですから。

―― 「ドルフィン」の打ち合わせは先生も楽しみにされているんですか?

 面白いですからね。これまでの30年間の漫画家生活の中で、「ドルフィン」の打ち合わせほど楽しい打ち合わせはないですね。もうゲラゲラ笑いながら聞いていますよ(笑)。

岩橋 ただの思い出話をしているだけなのに、そう言っていただけると嬉しいです。私の母を打ち合わせの現場に呼んで聞かせてやりたいくらいですよ(笑)。

―― 「ドルフィン」はケンカのシーンも比較的多い作品になりますが、この時はどこか注意していることはありますか?

 「特攻の拓」との描き分けで言うと、そこまで意識していることはないですね。作品になると「もっとこうしたらよかった!」ということはあるし、毎回反省するくらいで。それで少しずつ変わっていっているかなって思います。

岩橋 私が思うに「特攻の拓」と「ドルフィン」でメリハリの付け方が大きく違うのは単車だと思います。ここは私がお願いしたところなんですが、「ドルフィン」に登場する単車はどれもリアルな族車で、そのリアルさを追及してもらいました。そこにはこだわりましたね。もともと所先生の作品に登場する単車には金属ならではの冷たさが伝わってくるんだけど、そのことで「ドルフィン」では単車の冷たさがより強まったかなと。

―― 単車の冷たさですか?

岩橋 本来単車って機械で無機質なモノだけれど、そこに熱い思いを持った人間が乗ることで単車に命が吹き込まれて、人間と一体になる……それを表現してもらいたくて。

 単車は伊藤功っていう私のアシスタントが主に描いてくれているんですが、そうした冷たさを表現できているというのは彼の功績ですね。

岩橋 単車ってややもすれば兵器にもなりますが、アシスタントの方が描く単車の冷たさと先生が描くキャラクターのあたたかさが合わさるのが「ドルフィン」ならではの魅力かなって思います。

―― そんな「ドルフィン」は現在、第二部に突入し、今後の展開も大きく気になりますね!

岩橋 まだまだドルフィンは続きますよ! 今、14巻まで発売されているけれどこれは居酒屋で言えばまだまだお通しのレベルだから(笑)。今後、私が40人に袋叩きにされた話とか、まだまだ出ていないエピソードもたくさんあるから、ぜひ注目してほしいな。このエピソードを通じて、仲間のありがたさがわかると思うよ。

 岩橋さんのお話の通り、まだまだたくさん面白い話があるということなので皆様お楽しみに……という感じで今回は締めますか(笑)。

 

 

所十三氏のプロフィール

所十三【PROFILE】 所十三(ところ・じゅうぞう) 84年のデビュー作『名門!多古西応援団』(月刊少年マガジン、講談社)から『仰げば尊し!』(週刊少年マガジン、講談社)と、ツッパリ少年を主人公とした作品で人気を集め、91年連載スタートの『疾風伝説 特攻の拓』(原作:佐木飛朗斗、週刊少年マガジン、講談社)の大ヒットに至って『不良漫画のカリスマ』と呼ばれる存在に。
公式Twitter

岩橋健一郎氏のプロフィール

岩橋健一郎【PROFILE】 岩橋健一郎(いわはしけんいちろう) 青少年不良文化評論家。少年時代を暴走族「横浜連合鶴見死天王」として過ごす。暴走族引退後は当時の経験を活かし、全国の不良少年たちの声を拾い上げている。月刊チャンプロード誌上では約30年間にわたって現役暴走族たちをインタビューしてきた。現在も各種メディアで不良少年の声を代弁する、ヤンキー界の重鎮。
公式Twitter

 

告知①

岩橋健一郎氏が3月29日(水)よる10時放映の『水曜日のダウンタウン』に出演!

Tverでの見逃し配信はこちら:水曜日のダウンタウン「喧嘩・形」の大会、意外と盛り上がる説 ほか

 

告知②

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岩橋健一郎氏原作・所十三氏作画のリアル・特攻の拓と噂の『ドルフィン』最新刊14巻は秋田書店より絶賛発売中!

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