アニメ化、実写での映画化でも話題になったマンガ『東京卍リベンジャーズ』のヒットを受けて昨今、旧車、ヤンキーがにわかにブームになっているという。そんな中でヤンキーマンガの元祖とも言える『疾風伝説 特攻の拓』(以下、『特攻の拓』)の復刻版が発売され、若い世代を中心に大きな話題となった。そこで『特攻の拓』の作者・所十三氏とヤンキー界の重鎮・岩橋健一郎はこのブームをどう見ているのか……大いに語ってもらった!
―― ということで、『東京卍リベンジャーズ』のヒットや『特攻の拓』の復刻版の発売で今、旧車やヤンキーの文化がブームになってきていますが……?
所氏 以下、所 今って旧車がブームになっているんですか?
岩橋氏 以下、岩橋 日本はもちろん、今では海外にも飛び火していて台湾やアメリカのカリフォルニア、フランスでもヤンキーマンガが人気で、そこから旧車がブームになっているんですよ!
所 そうなんですか!? フランスで特攻服がコスプレとして人気が高いって聞いたことがありますが……。
岩橋 すべてのキッカケは『東京卍リベンジャーズ』なんですが、不良の文化って定期的に続いていくので、なくなることはないんですよ。これからも戦国時代のようにどんどん語り継がれていくと思います。
―― そんな昨今のヤンキー、旧車ブームのキッカケとなった『東京卍リベンジャーズ』ですが、所先生はご覧になったことはありますか?
所 ザッと読ませて頂きました。
―― 作画を見ていると『特攻の拓』と似たところを感じるのですが……?
所 作画としては、和久井健先生のオシャレな感じの絵柄で、すごく細かいところまでこだわっている今風の絵なので敵わないなって(笑)。昭和のころに育った我々とは違う魅力があると思います。キャラクターが被るところはあるかもしれないけれど、ヤンキーマンガでウケるキャラクターは任侠モノ、もしかしたらスポ根マンガとも被るかもしれない。読者の心に響くモノというのは共通なので、「こんなシーンにこういうキャラクターが欲しい」というのがあるんです。
―― 和久井先生とも交流があるんですか?
所 直接はないんですが、編集部を通じてやり取りをしたことがあって。『特攻の拓』の武丸のファンだって言ってくれたのはうれしかったな(笑)。
―― 『特攻の拓』と『東京卍リベンジャーズ』を見比べると、どこか共通項が多いようにも見えます。
岩橋 私からしたら、『特攻の拓』が再版されるとは思わなかったですよ! 令和のこの時代に『特攻の拓』がまた読めるんだって。
所 物事が決まるタイミングって面白いもので、いろんなものが集まる瞬間があるんですよ。『特攻の拓』が再版するキッカケになったのは私のデビュー当時の担当さんがTwitterを始めたのでDMを通じてやり取りを始めたことなんです。そのなかで「『特攻の拓』って今はやっていないの?」という話になり、そこから復刻版の話が進んでいったんです。それがたまたま『東京卍リベンジャーズ』の連載終了のタイミングだったんですよ。
岩橋 『特攻の拓』の復刻版が販売されるタイミングも重要だったと思いますが、『東京卍リベンジャーズ』の話の中に「ハードラックとダンスっちまった」など、『特攻の拓』で生まれた言葉が出てきて、若者たちの間でにわかに流行っていたんですよ。なので、若者がこうしたヤンキー、旧車ブームの火付け役になった面もあると私は思っています。だからこそ『特攻の拓』の広告が渋谷をジャックしたんだと。
/#特攻の拓 × #東京卍リベンジャーズ
『不良魂は“時代”を超えて受け継がれる。』
\渋谷駅と横浜駅(『疾風伝説 特攻の拓』の舞台は横浜)、そして護国寺駅の講談社社屋にも”魂の継承広告”を掲載!
気合ブリバリ入ってます!
“ぜってー”見に来てください! pic.twitter.com/mdrgzdyHSh— ヤングマガジン編集部 (@magazine_young) February 20, 2023
所 『東京卍リベンジャーズ』の舞台も渋谷でしたよね。
―― あとはお笑いコンビのハライチみたいに芸能界にもこうしたヤンキーマンガが好きな方がいて、番組で話してくれて話題にしてくれるということもありますね。
岩橋 こうした影響力のある芸人やタレントがテレビやSNSで発信してくれたのも大きいですが、何よりも所先生の作品が今の若い子たちに求められているんだと思いますし、復刻版が話題になったんですよ。例えば氣志團の衣装の学ランも所先生の作品『名門!多古西応援団』がモチーフになっていますよね。
―― 所先生が描くキャラクターのビジュアルが確立しているからこそ、現実の世界でも衣装で使われているという面がありますよね。
所 そこには「チャンプロード」の影響もあったのかなって思います。『特攻の拓』に登場するキャラクターを考えるときに「チャンプロード」に掲載されているヤンキーの子たちをモチーフにすることもありました。龍也や武丸のヘアスタイルなんかもそこからヒントを得ています。
―― それはビックリです!
所 あと「チャンプロード」に掲載されている子たちを描いていくことで絵柄が少し変わっていったと思うし、目つきとかふてぶてしい顔つきとかを見て武丸の顔立ちができていったのかなって。龍也は写真のまま描いた感じですね。
岩橋 『特攻の拓』を1巻から見ていくと、そうした作画の変化が見られますか?
所 最初のころは「多古西応援団」の延長というところがありましたが、いろいろなキャラクターを描いていくうちにどんどん変わっていったと思いますよ。
岩橋 そうしたヤンキーたちのリアルな怖い面と所先生の作画がマッチしたことが『特攻の拓』がヤンキーの子たちだけでなく、一般の子たちからも支持された理由だと私は思います。あと、ヤンキーの子たちとそうでない子たちで『特攻の拓』を読んだ後の感想が違うと思います。
―― 例えばどんなところが?
岩橋 一般の子たちにとって『特攻の拓』って現実には起こりえないファンタジーな面があるのですが、ヤンキーの子たちにとっては「こうなったらいいな」っていう成功例なんですよ。みんなが思い描く理想のストーリーなんです。平凡な子が仲間とともに不良の世界に名を残していくというね。
所 ファンタジーな面があるからこそいいという面もあるかもしれないですね。
岩橋 そうなんですよ! リアルすぎると一般ウケしないんです。
(所)なので『特攻の拓』の連載当時、私は最初から「ファンタジーなところがあります」って言っていました(笑)。
パート3はこちら:「特攻の拓」「ドルフィン」が本当に伝えたいこととは?「特攻の拓」作者・所十三&岩橋健一郎の最強タッグが現代の暴走族・旧車會を語る!
所十三氏のプロフィール
【PROFILE】 所十三(ところ・じゅうぞう) 84年のデビュー作『名門!多古西応援団』(月刊少年マガジン、講談社)から『仰げば尊し!』(週刊少年マガジン、講談社)と、ツッパリ少年を主人公とした作品で人気を集め、91年連載スタートの『疾風伝説 特攻の拓』(原作:佐木飛朗斗、週刊少年マガジン、講談社)の大ヒットに至って『不良漫画のカリスマ』と呼ばれる存在に。
公式Twitter
岩橋健一郎氏のプロフィール
【PROFILE】 岩橋健一郎(いわはしけんいちろう) 青少年不良文化評論家。少年時代を暴走族「横浜連合鶴見死天王」として過ごす。暴走族引退後は当時の経験を活かし、全国の不良少年たちの声を拾い上げている。月刊チャンプロード誌上では約30年間にわたって現役暴走族たちをインタビューしてきた。現在も各種メディアで不良少年の声を代弁する、ヤンキー界の重鎮。
公式Twitter
告知①
岩橋健一郎氏が3月29日(水)よる10時放映の『水曜日のダウンタウン』に出演!
Tverでの見逃し配信はこちら:水曜日のダウンタウン「喧嘩・形」の大会、意外と盛り上がる説 ほか
告知②
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告知③
岩橋健一郎氏原作・所十三氏作画のリアル・特攻の拓と噂の『ドルフィン』最新刊14巻は秋田書店より絶賛発売中!
2023年1月20日
マンガクロス「ドルフィン」
第14巻発売、皆さん
夜露死苦(■_■)ゞhttps://t.co/lWUAIVArQZ pic.twitter.com/xlN3gBdG6W— 岩橋健一郎@ドルフィン (@yankee4649) December 26, 2022