「人馬一体」という言葉があるが、これは時に鉄馬と評されるバイクにも当てはまる。マシンは乗り手の操作に機敏に反応し、乗り手はマシンのパワーでどこまでも疾走する。そのなかで、乗り手のマシンへの想いは”絆”と言えるほどにまで高まるのではないだろうか。


ハンドル周りもノーマル風ながら、ヨーロピウィンカーや樹脂の角ミラーなど、随所に細かい部分で手が入っている。主張しすぎないパーツで使い込まれた歴史を物語りつつ、同時に”旧車らしさ”の雰囲気を感じさせてくれている。

手入れの行き届いたエンジンは、発売当時クラス最大だった48馬力を感じさせるのに十分な雰囲気を漂わせながらも、イチパチのポイントカバーがいいアクセントになっている。
マフラーはイノウエのエンデュランス管。実際のところコールのレスポンスなどの性能的にはエンデ管を超えるマフラーも存在するのだろうが、やはりCBXが現役時代に絶賛されたその威光は令和の現在でも衰え知らず。繊細な造形から放たれる”エンデサウンド”は、やはりCBXのキャラクターを決定づける大きな要素と言えるだろう。

実はこのバイク、20年前に亡くなった後輩からオーナー氏が受け継いだものだという。上品な質感の三段シートの背面には、後輩を想うメッセージが力強く刻まれている。その白文字一つひとつには、当時の記憶と、失われた時間への気持ちが込められているのだろう。
ただの族車では終わらない、このCBXには“絆”そのものが形として残っている。エンジンをかければ後輩の声が、夜の街道を走れば元気な姿が蘇る。オーナー氏にとってこのマシンは、後輩との青春を今も繋ぎとめる存在なのだ。

こうして改めて眺めると、このCBX400FFは、今を走ると同時に、失われた仲間と共に走り続ける“証”でもある。
族車は派手さや音だけでは語れない――そのバックグラウンドにある人の想いと絆こそが、本当の魅力なのだと、このCBXは教えてくれている。
■オーナー:スカイ
■チーム名:空
■ひとこと:亡き後輩の単車。オレの宝物。