チームの旗をなびかせて、数百台で深夜の街道を埋めつくすのが昭和の暴走なら、チームは持たずにLINEグループで場所と時間を決めて、三々五々集まってきて走りだすのが平成後期の暴走スタイルだった。
これが令和となると、マシンや走り方もさらに進化(!?)を遂げているのだという。
令和は集合しない
昭和生まれには、LINEで仲間を集めて暴走する時点で、すでに衝撃だったんじゃないか。
地元もなく、チームも持たず、SNS上で知り合ったという関係性だけで走って何が面白いの?
そういった感想が出てきても、なんの不思議もない。
だが、令和は集合すらしない。流れ合流、流れ解散。なかには、ひと言も交わすことなく合流して、その後解散していくことも珍しくないとか。
そんな横浜連合の集会みたいなことができるのか?
それができるのだ。
ちょっと前にサービスを終了したアプリ、ゼンリィが全盛のころにはこのアプリを使用して走っていた十代が多かったが、その後も位置情報提供アプリを駆使して自由に参加、自由に離脱するスタイルで走っている。
仲間意識はなく、誰も干渉しないから一人が捕まっても芋づる式に検挙されることが少ない、という意外なメリットもある。
令和は単車に乗らない
今なおチームに所属していたり、旧車會に入っている場合はまた別だが、上記のような走りをしている若者の大半は、愛車が原チャリだ。
コルク半をかぶってチャンバーは交換するが、それ以外はノーマルというケースも多く、パッと見では一般人のチョイ乗りと大して違いはない。
それでも原チャリに乗るのは、「中型は目立ちすぎる」からだそうだ。小回りも効かない、音もデカい中型は、彼らにしたら「自分の居場所を教えながら走っているようなもの」ということになる。
令和は現行犯逮捕じゃない
それもこれも、理由はひとつ。「逮捕されないため」だ。
「名前を連呼するパトカーに追尾されながら集会で走っていた」というツワモノもいたくらいで、昭和の暴走族は、たとえ身元が分かっていても現行犯でなければ捕まることはなかった。
それが防犯カメラが設置されるようになってから、映像を証拠に逮捕することが可能に。追尾中の事故を防ぐ意味からも、現行犯にこだわらず公道以外の場所、たとえば自宅などで身柄を確保できるようになっている。
横のつながりが強い暴走族チームであれば、ひとりが逮捕されたら芋ずる式に逮捕されてしまう可能性もでてくるが、アプリでつながっているだけの関係なら何とでもいえる。
しかも、「LINEトーク」などの会話も残らないので、物的証拠が探しにくくなる。そもそも、本当に知らないケースも多いようだ。
警察にビビるくらいなら暴走するなよ、というなかれ。多くのルールは、偉大な先輩方の“激走の歴史”によって厳格化・明確化されたものなのだから。
それでもどこか物足りなさを感じてしまうのは、筆者がオジサンだからだろう。
参照元:神戸新聞NEXT
執筆者:i-Q JAPAN編集部