車庫だけでなく、ツーリング中でも油断はならないとまで言われるCBXの盗難事情。さすがに仲間と走っていたらそこまで危険ということはないだろうが、単独走行になったところを狙ってくることはあるそう。今回は、ツーリングの帰りをぴったりマークされたCBXオーナーが、これを回避したお話だ。
神奈川県在住のYさん(40)は、CBXオーナーとなってすでに10年が過ぎようとしている。自宅周辺では車庫に止めていた単車が窃盗されるという話はほとんど聞いたことがなく、こうした盗難の噂もどこか他人事のように考えていた。
ところが数か月前、ツーリングで富士山方面へと出向き、その帰りの高速道路上でのこと。背後にピッタリと付いてくる一台のセダンの存在を感じて、「これは狙われている?」という疑問を抱いたという。
「明るいうちは多少スピードも出すし、渋滞の時間帯なら単車は別行動みたいなもんだから、後方を気にすることなんてないよ。でも、その日は遠征先の地元の人間と遅くまで盛り上がっちゃって。帰りがだいぶ遅くなったんだ。まだ残ってたメンバーもいたけど、翌日が早かったから数人で先に戻ってきたんだ」
そんな先発隊のメンバーだが、完全に地元が一緒というわけでもなく、途中でYさんは単独行動となった。
「視力が落ちてて、夜は遠目が効かないからゆっくりめに走ってたんだよね。そしたら、な~んか後ろにずっと同じ車がいるなぁって」
チラと見たその車は、白っぽいセダン。ちょっと車高も落としてそうだった。気味が悪いのでスピードを落としてやり過ごそうとしたが、後方の車両も一緒にスピードダウン。ならばと追い越し車線にでたところ、後方の車両も一緒に動いてきたので、「これはつけられてるな」と、確信したそうだ。
ちょうどサービスエリアが見えてきたので一旦、休憩をとることに。
「マジでぶっとばしてやろうかと思ったんだけど(笑)、それで(立場が)悪くなるのはこっちじゃん? とりあえず冷静になろうと思って」
それでもついてくるようなら、釘を刺しておこうと思ったが、引き離していたのか、すぐ後方についてくることはなかったとか。
せっかくなのでとトイレ休憩を済ませ、再び走り出そうと思ったその時、目の前に大型ネイキットの集団が見えた。
「ここに混ざっちゃえ!」
さも仲間のような顔をして近づき、彼らが出発するタイミングで後方から一緒にスタートしたのだそうだ。すると合流するあたりで先ほどの白のセダンが近づいてきたのが分かった。
だが、YさんのCBXが先のネイキットの集団の後方を走り、そこから離れないでいたのを見て、10分ほど経ったところで急にスピードを上げ、追い抜いて行ったのだそう。
「単独行動してたら、どこまでもついてくるつもりだったんだろうね。ネイキットの大型のなかに三段シートの単車が一台だけ走ってるのはどう考えても不自然だけど(笑)、万が一仲間だったら数的有利な状況になるからね。一台にならないってのは、方法としてはアリなんじゃない?」
ちなみに、失礼ながらリアルでYさんに出会ったら、まずこの人の単車を盗もうなどと誰も思わないイカツめのルックス。だが、窃盗団には持ち主がどんな人物なのかは関係ない。だからこそ、防犯対策は誰もが万全にしておくに越したことはないだろう。