リアルでは全然ハゲていないが、そんなのは関係ない。駄目だ。これはもう、なんとかあきらめてもらうしかない。
このクセ者の内田なる「男」は、天然なのか、それとも人というものをナメているのかは定かではないが、超速ダッシュで待ち合わせ場所へ向かうとのこと。
しかも、「近くにいるから余裕で5分以内には着きますよ！」と、電話では自信ありげに話すので、もう少しだけ待ってみることにしたのだが……。
………………5分待ってもヤツは来ない！
まぁまぁ、さすがに近くにいるといっても、さすがに5分は無理だろ。と、思い、もう少しだけ待つことに。
「13:15」 電話切ってから15分経つが、まだ来ない。いや来る気配すら感じられない…。もう一度ヤツに電話をかけてみると「今、菓子折り買ってるとこなんで、あと5分待っててください…ガチャ！」と、今度は一方的に電話を切りやがる。
絶対コイツは、ナメてる。余裕で5分で着くと言いながら、今度は菓子折り買ってるから、もう5分待てだとーーーーーー!!!!
こっちは、お前から呼ばれてしかたなく北千住まで来てやってんのに!!!! と、怒りたくなる気持ちを抑えながらも、「菓子折り買ってくるなんて本当は良い奴なんじゃん」と内心、関心をしていたのだが……。
「13:30」 まだこなぁーーーーいぞーーーー!!!!
しかも、内田の携帯は最低料金のプランだから、奴から電話をかけてくるということは期待できない。これが最後、これで最後、ほんとに最後。この最後の電話でアヤツが電話にすら出なかったら、もう何を言われても編集部には入れない。というより、そんな奴に仕事が任せられるわけもないから、もう相手にもしない。
「トゥルルル・・・」
「はい」
「内田クンさぁ、いまドコよ？」
「北千住のマルイですけど」
「はぁ？ 何言っちゃってんの?! オレさっきからずーーーっとマルイ前にいるんだけど 君ドコにもいないよね！」
「え、いますよ。さっきからずっと」
「全然、いねぇじゃん！ 嘘つくなよ!!」
「嘘じゃないですよ！ 拙者10分前からマルイの中で待ってますよ!!」
「はぁ？ 中？ 中っつたのキミ?! オレ待ち合わせ時間からずーーーーっと表で待ってんだけど、ナカァァァァ!!!!」
受話器を耳に当てながら、怒りに震えマルイの玄関口を覗き込むと、ナニか目に入る。もちろん平日昼間といってもマルイだから、さすがに人はいるのだが。明らかに場違いなナニかがいるのだ。
「キミ、ちなみに今日はどんな格好してんの？」
「え、普通ですよ」
「いやいや、普通って言われても今日が初対面なわけだからさ、キミの顔とかわからな……」
「……ネルシャツです。赤の」
「赤のネル……」
「だから、赤のネルシャツって言ってんじゃないですか！」
お前、ひとの話しを最後まで聞けよ。と思いながらも、もう一度、中にいるナニかに恐る恐る目を移すと…やっぱりヤツだ。赤のネルシャツはアイツしかいない。
「で、どこにいるんですか？ オタクは?!」
オタク、だと？ このオレが？？ ヲタ……
「……拙者、目が悪いので手を振ってもらえませんか？」
もう話しも長いので手を振るとやはり、そのナニやらが仏頂面で近寄ってくる。くる、くる、くる、キターーーーーーー！ 今どき見ない本物が大事そうに紙袋を抱えて目の前にキ・タ・ゾ!! マジモンのヲタ。i-Q JAPANをコイツは知っているのだろうか？ どう考えても場違いな「お方」だぞ。さすがに旧車會系Webマガジンともなれば、ソコソコの人間をイメージするものだが、コイツはその真逆！ 筋金入りの「ヲタク」ではないか。